先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「あれ、こんなところに。珍しいですね。」
日野が入ってきた。
早速コーヒーを買って、同じテーブルに着き聞いてくる。
「何話してたんですか?」
「日野さん。日野さんは知ってるんですか?課長と…ッ」
さっきの話をしようとする置田をギロリと睨んだ。
置田は言葉に詰まり震え上がる。
「ん?課長となんだ?」
「あ、いえ、なんでもないです~」
青ざめ慌てて手を振る置田が可笑しくて、ククッと笑いが漏れる。
俺と置田を交互にみて首をかしげる日野。
「それより日野、浅田食品の件だが…」
これ以上詮索されないように仕事の話を振る。
しばらく仕事の話をしながら談笑していると
「コウくん・・・」
と、聞こえた気がして思わず振り向いた。
花笑か?と思ったが花笑は人前ではこの呼び名で呼ばない。
「今、呼ばれた気が…」
日野が呟いたのを聞いて思わず凝視する。
「日野さん、こうくんなんて呼ばれてるんですか~」
可笑しそうに言う置田に何でも無いように日野が答える。
「そりゃあ晃平だから、子どものころはこうくんとかこうちゃんて呼ばれてたよ。あ、彼女とかにも呼ばれてたな。」
こうくん…
花笑が昔思いつきで俺をそう呼ぶようになってから気にすることもなく好きにさせてたが、日野も呼ばれてると思うと黒いものがこみ上げた。
それが嫉妬とは思いいもよらず…
今度から花笑にはこうくんと呼ばせるのはやめよう…
心の中で固く誓った。