先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

私もカフェオレを飲みながら、さっき考えてたことをそれとなく聞いてみようと思った。

「航さん?今欲しいものとかある?」

「ん?なんだ?急に」

「ううん、何となく?」

それとな~く聞いてみたつもりだけど、ばれちゃったかな?
目を合わせないようにちらりと横を見る。

「別に、欲しい物なんてな…、」

急に言葉が止まって、ん?と首を傾げて航さんを見た。
航さんは私をじっと見た後、宙に浮かせて何か考えてるようだ。

「あぁ、…ある。欲しい物」

「何?」

「金では買えないけど、お前の持ってる物だ」

「私の持ってる物!?」

私が持ってて欲しい物ってなんだろ?そんな航さんが欲しがる物なんてあったかな?
頭の中が???となっていると

「気にすんな、その内貰うから。」

「何?気になるよ!教えて!」

腕にすがってお願いしたけど、その内わかるとあしらわれた。

「もう、けちっ」

教えてくれなくてちょっと拗ねて立ち上がり、掃除を再開する。
航さんはくすくす笑って私をほっといてまた資料を見ている。

も~う、せっかくなら欲しいものをあげたいと思ってたのに!
プンプンしながら棚の埃を取っていると、航さんがいつも身に着けている腕時計が目に入った。
そっと触れる、高級そうな皮の腕時計。
でもそのガラス面はひびが入って側面も傷が付いている。

航さんの手首の怪我と、この時計の傷が付いてしまった原因、それは…
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