先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
4日前
二人とも少しだけ残業をして早く帰れた日だった。
航さんと一緒に帰れるのは稀でちょっと浮かれていた。
駅までの道を歩いていたとき、航さんの一歩前に進み振り返って、今日はどうする?なんて話してると、どこからか悲鳴が聞こえた。
「きゃ~泥棒っ!」
「ひったくりだ!!」
「だれか捕まえて~~!」
何事かと思っていたら、左側の路地裏から黒いものが飛び出してきて私に突っ込んできた。
避ける間もなく、吹っ飛ばされて横の壁に激突する寸前、
「きゃあっっ!」
「花笑っ!!」
航さんの腕が壁の間に入って私を守ってくれた。
「大丈夫か花笑?」
「う、うん」
航さんが衝撃でふら付いた私を支え、無事を確かめてる間に、私とぶつかった勢いで転げていたひったくりらしい犯人がフラフラと立ち上がりまた走って逃げて行った。
「待てこらっ!」
言うが早いか、航さんはカバンを私に渡し、ぴゅーーっと犯人を追いかけて行ってしまった。
「あっ航さんっ! は、早い…」
私も後を追いかけたけど早くてどんどん遠ざかってく。
ゼーハー言いながら走っていくと曲がり角あたりで追いついたらしい航さんが犯人ともみ合っていた。
「航さん危ない!」
「ぅおりゃっ!」
体制を崩したと思った瞬間、見事な背負い投げで犯人を倒し伸してしまった。
「っふぅ~」