先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
手をぶらぶら振り、立っている航さんを見て思わず抱き着いた。
「よ、良かった、無事で!」
「おっと。なんだ、俺そんなに弱くないぞ」
私を難なく受け止めてそっと頭を撫でてくれる。
そういえば、航さんは柔道の有段者だった。
ほっと安心して脱力する。
その後、ひったくられた被害者や目撃者、警察官も来て犯人を取り押さえ、事情聴取の為警察へ。
なんだかんだと時間がかかり、帰れたのは夜も更けた10時過ぎだった。
今日はこのまま航さんの家に泊まることになった。
部屋に入ると、腕時計を取りキーホルダーと共に棚に置き、上着を無造作に脱いで、ネクタイを緩めながらドサッとソファーに座った航さん。
「あ~疲れた。犯人追いかけるより事情聴取の方が疲れたな。」
「夜ご飯も食べれなかったね、私何か作るね」
「ああ、いい、もう今日は…」
「でも、お腹空くよ?」
「それより花笑、おいで。」
キッチンに行こうとソファーの後ろに立っていた私の腕を取って呼び寄せた。
大人しく従って隣に座るとふんわりと抱きしめられ目を見つめられる。
「お前、ほんとに体は大丈夫か?さっきはぶつかったときかなりの衝撃だったと思うが…」
「大丈夫!航さんのお陰でどこも痛くないわ」
「本当か?確認させろ」
疑り深く目を細め、私の服を脱がそうとする。
「ちょっ航さん!!」
「イっ…!」
焦って暴れると後ろに倒れそうになって航さんが支えてくれた。
その瞬間に痛そうに歪んだ顔。