先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「航さん!どこか怪我したんじゃないの!?」
ハッとして、あちこち触って確認する。
「別に何とも、イッ…」
私が左手を掴んだ時に痛がる仕草。
ワイシャツの袖を巻くってみると手首が赤く腫れていた。
「航さん!怪我してるじゃない!…あっ、私を庇ってぶつかったとき…?」
「違う!これは犯人を投げた時に捻ったんだ」
怖い顔して私を見る航さん。
「でも…」
「これぐらいほっといても何ともない…」
「何ともないわけない!」
「花笑っ、っつ…」
すくっと立って隣の部屋に逃げ込む私を焦って呼び止めた航さんは、やはり痛むのか腕を抑え項垂れていた。
私は湿布や包帯などを持って航さんの前に跪き、黙って航さんの腕の応急処置をした。
傷もある。やっぱり私を庇った時に壁に打ち付けたのが原因だろう。その上犯人ともみ合い背負い投げをして余計に捻ったのかもしれない。
先ほどの光景が思い出されて涙が出てくる。
「……」
航さんは黙って私を見ている。
「私は…どんなに航さんが強くても、こんな怪我してほしくない…」
もし大怪我や、命を落とすような事があったら…
そんなことまで考えてしまって怖くなって、包帯を巻き留めたところで涙が零れた。
「花笑…」
航さんに右手で引き寄せられ膝の上に横座りになった。
「そんな泣かなくても大したことないから、泣くな」
「でもっ…んっ」
言葉を遮るようにキスをされた。
「大丈夫だ、こんなの2、3日で治る」
「じゃあ…明日絶対に病院で診てもらってね。ちゃんと診断してもらわないと安心できない」