先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
離れて思うこと
それから2日後、
前日の夜散々抱き締めキスをして、朝、寂しそうな顔をする花笑を連れて行きたい衝動に駆られながら出張先へ向かった。
こんなに後ろ髪引かれるなんてな…。この調子じゃ先が思いやられる…と自嘲気味に笑う。
日野も同行し訪れた坂上食品株式会社は地元の野菜や加工品を冷凍製造している。
今回は卸契約と製造工場の視察。
坂上社長は恰幅がよく豪快に笑う気のいい親父という感じだ。
「いやあ、大企業の課長さん自らお越しくださるとは!こんな地方の商品に目を付けて頂けて嬉しい限りですわ!がっはっはっ」
終止機嫌よく、交渉も順調に執り行うことができた。
明日は細かい内容を詰め、その後工場視察というスケジュールだ。
「大変申し訳ないんですが今後の予定が詰まってまして視察を十分にしたいところですが今回は要点のみ押さえて1日早く切り上げてもいいでしょうか?」
「えっ?」
日野に言って無かったから面食らったような顔をしている。
「そうですか~じっくり見ていただきたかったんですが仕方ないですね。またの機会もあるでしょう。今夜は会社総出で歓迎会を開きたいので是非参加してくださいよ!」
「勿論です。ありがとうございます」
頭を下げ、一度チェックインをするためホテルに向かった。
「1日早めるって何ですか?聞いてないですけど」
さっきの話を持ち出す日野に、
「ああ、ちょっと予定があってな。お前はそのまま4日間いてもいいんだぞ?」
「えっいやいや、早く帰れるなら俺も一緒に帰りますよ。何か用事ありました?」
「まあ、ちょっとな」
日野が俺の誕生日を知るわけもなく、仕事の用事だと思ってるようだから濁しておく。