先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
ホテルに戻ると花笑からメールが届いていた。
送信時刻は午前0時。
[お仕事お疲れ様です。お誕生日おめでとう。この一年が幸せで満ち溢れていますように。航さんの傍にいられることが私の幸せです。早く帰ってきてね、待ってます。]
花笑に早く会いたくなって胸が疼いた。
すぐに電話をしたいところだが、もう気が付けば午前3時近くになっている。さすがに寝てるだろう。
早く帰って花笑をビックリさせてやろう。
最終日は2か所の工場視察。
本社に一番近い片田舎にぽつんと建つ工場と、広大な農園がある工場。
どちらも特徴があり、新鮮な地元の農産物の加工が行われている。
少し古いように思う田舎の工場は、創業からあるものらしい。
「ここから始まったんですね…」
感慨深く思いながら歴史ある工場の視察を終えた。
時刻は午後2時、今から帰れば夜には家に着くだろう。
工場の外へ出てタクシーを待ってると、原田さんに玄関先の陰に呼ばれた。
「山片さんちょっといいですか?」
「なんですか?」
「あの……、」