先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

びっくりし過ぎて言葉が出ない。
見つめる航さんの顔がもう涙で滲んで歪んでいる。
航さんはケースから指輪を取り出し、私の左手を取り薬指にはめた。
煌めく指輪を見下ろすと涙が零れた。

「花笑、結婚しよう?」

私の顔を覗きこむ優しい眼差し。
思わず航さんの首に抱きついた。
私を抱き止め、そのまま引き寄せられ膝の上に乗った。

「花笑、返事は?」

「はい…はい!航さん嬉しい!」

泣きながら返事をした。
正式に付き合うようになってからまだ3ヶ月あまり。
結婚なんてまだまだ先のことだと思っていたから、嬉しすぎて胸がドキドキと高鳴っている。

「嬉しすぎて死んじゃいそう…」

「ばかやろ、簡単に死なれてたまるか」

私の呟きに呆れ気味に言ってしがみ付いてた私を離した。
膝の上に乗ってるから低い位置から見上げられて、その優しい瞳にまたドキンと胸を打つ。

「これからずっと二人で生きていくんだ、死なせやしねえ、お前を守っていく。」

「航さん…」

「…なあ、お前もうここに住め。もう離れて暮らすなんて無理だ」

私も同じ気持ち。もう離れて一人暮らしなんてできない。

「…うん」

「愛してる花笑…」

「私も…愛してる…」

いつもより熱い唇。
ゆっくりとお互いを確かめ合うようにキスを交わした。

・・・・・
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