先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
私より少し背が低くて、丸顔の優しい笑顔、ちょっぴりふくよかなこの人が航さんのお義母さん。
「そう!航の母の奈美恵です。さあ、入って!」
「あっはい。はじめまして。松崎花笑と申します」
頭を下げ挨拶するのもそこそこに腕を取られ中に引きこまれた。
檜の一枚板のカウンターが目を引く暖かみのある店内。他に4人がけのテーブル3つに奥には座敷もあるようだ。
お客さんが一人カウンターにいる。
「航~お前結婚するのか!えらい別嬪さん連れて~!こうしちゃいらんねぇ・・」
「日高のおっさん、久しぶり・・・」
航さんが挨拶するもその日高さんというお客さんは慌てて帰っていった。
「まいどどうも~。航、とりあえず奥の座敷に入れ。今寿司握ってやるから」
カウンターの中にいた航さんによく似たお義父さんらしき人が声をかける。隣には若い男の人。
「へぇ兄貴。そんな可愛い子どこで捕まえたのさ」
「あっあのっ…」
若い人が弟さんらしい。挨拶しようしたらお義母さんが私を引っ張る。
「いいからいいから!挨拶は後で!こっちいらっしゃい!」
上機嫌でお座敷に連れていかれ、私はアワアワするばかり。航さんが諦め顔で付いてくる。
10畳ほどの広いお座敷には既に美味しそうな料理が用意されていた。