先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「今日は航がお嫁さん連れて来るって言うんで午後から休業するのよ!だからちょっと待っててね!お父さんも張り切ってお寿司握ってくれるから!」
「そんな休業するまでしなくても…」
航さんがボソッと呟く。
「何言ってんの!大事なお嫁さんに美味しいもの食べさせたいって昨日から仕込んでるのよ!それにゆっくり話したいじゃない!」
お義母さんは仁王立ちで航さんに言うと私に向き直りにっこり。
「花笑さんゆっくりしてってね。今日はもちろん泊まっていくでしょ?馴れ初めとかいっぱい聞きたいから!」
「は、はい!」
お義母さんの勢いに乗せられて思わず返事をしてしまい、お義母さんは満足そうに頷いてカウンターの方に手伝いに行ってしまった。
「はぁ~、お義母さん元気な方ね。」
「まあ、元気だけが取り柄だな…」
航さんは眉をハの字にして困り顔。ふふっと思わず笑ってしまった。
しばらくしてお寿司の入った桶を持ってお義母さんと弟さんが来てその後ろからお義父さんも帽子を脱ぎながら入って来た。
皆そろい、私は居住まいを正し、改めて皆さんの顔を見た。自己紹介しようと口を開きかけた時、先に話し出したお義母さん。
「改めまして、自己紹介するわね。私は航の母の奈美恵。隣がお父さんの宗助(そうすけ)」
優しい笑顔で会釈するお義父さんは白髪混じりの短髪に背が航さんより少し低いくらいの長身。端整な顔立ちは航さんと似ている。