先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「本当は昼間の景色の方がいいが、夜もいいだろ?ここから見る海が好きなんだ」
懐かしんでいるように穏やかな顔で海を見つめる航さんを見て思い出した。
「そういえば、社員旅行の時もずっと海を見てたね?」
「ああ…つい。海を見てると時間を忘れてぼーっとしてしまうんだ。いつまでも見ていられる」
ちょっと恥ずかしそうに言う航さんが可愛く見えた。
「ふふっ航さんにとって海を見るのは癒しの時間なんだね。」
「ああ、お前の次に癒される存在だな」
そう言って私を見つめる瞳に嬉しくなった。
「…今日は騒がしくて疲れただろう?こうなることが解ってたから家族意外誰にも知らせなかったんだが…」
困った顔の航さんにふふっと笑って肩に手を置いた。
「すっごく楽しかったよ?航さんもご家族も、町内や商店街の人達に愛されてるんだな~って凄く実感した。私も受け入れてもらえたみたいで嬉しかったし。」
にっこり笑って告げると航さんも見上げながら嬉しそうに笑う。
「お前が受け入れられるのは当たり前だ。最高の嫁だからな。」
「航さん…」
嬉しくて、自分から航さんの首に腕を回しゆっくりとキスをした。
唇を離すと蕩けるような航さんの優しい笑顔。
二人で見つめ合い微笑んでまた近付こうとしたら、「ごほんっんんっ…」と咳払いが聞こえた。
航さんと二人で瞬きしながら目を合わせ、恐る恐る窓の外を覗いたら、隣の窓から海斗さんが顔を覗かせていた。