先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「海斗さん!」
「お前、覗き見とはいい度胸だな…」
焦って逃げようとするも航さんにがっちりホールドされて動けない。
堪らず航さんの肩に顔を埋めた。
「いや、酔いざましに窓開けたら話し声が聞こえたから…見てはいないぞ!イチャイチャモードに突入する気配がしたから阻止したんだ!俺が隣にいるんだからいちゃつくの禁止だからな!結構聞こえるんだぞ!」
「ふん、言われなくてもお前に花笑の声は聞かせないから安心しろ」
「わ、航さん!」
なんだかあらぬ方向に話がいきそうで慌てて航さんを止めた。
航さんはニヤリと笑い余計に腕に力を込めて私を閉じ込めた。
「海斗、お前はどうすんだ?雅美のこと。お前の様子だと相手にもされてないようだが?」
「ぐっ、誰のせいだと思ってんだよ…」
「…人のせいにして動かないのはお門違いというものだ。前に進むも進まないもお前次第じゃないのか?」
「…わかってるよ……。兄貴が結婚するんだ、これを期に関係を変えてやるよ…」
「まあ、ふらついてたお前も悪いんだ。せいぜい頑張れ。」
「わあってるよっ!花笑さん!こんなくそ兄貴だけどよろしく!じゃお休みっ!」
おやすみなさいと返事をする間もなくパシンっと窓を閉める音がして辺りはまたシーンとなった。
航さんもゆっくり窓を閉める。
「………」
何も言えずずれた眼鏡からじっと航さんを見つめる。
なんかさっきの会話が引っかかる。雅美さんという人は航さんのこと…。