先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

いまだに抱き締められたままずれた眼鏡を直され、気にしてることが解ってるのか航さんが説明してくれた。

海斗さんは雅美さんが好きで、雅美さんは航さんが好きだったらしい。前に一度大学に進む時告白されたことがあるけど航さんは雅美さんのことは恋愛対象としてみれなくて断ったそうだ。それ以来会うのは実家に帰るときくらいしかなかったけど、海斗さんの様子だといまだに雅美さんは航さんのことが好きで海斗さんは告白を躊躇している、ということらしい。

「花笑、前に言っただろ?他の女は関係ない。俺が愛してるのは花笑だけだ。…海斗と雅美は昔からウマが合うんだ。雅美は好きな相手を間違ってる。それに早く気づけばいいんだが…。」

思案顔で私の頭を撫でてくれる航さんをじっと見つめる。
またこんな話を聞いて内心穏やかじゃないけど、私は航さんを信じてる。
航さんの腰に腕を回しぎゅっと抱き締めた。

「海斗さんはずっと辛かったろうね…」

撫でてくれてた手が止まった。

「まあ…そうは言っても海斗の奴も本命にいかずに遊びまわってるからな。自業自得だ」

「え?」

なんのことだかわからずに顔をあげたら、気まずそうな顔。

「海斗は花笑のように一途じゃないってことだ」

そう言って私の頭を胸に押し付け撫でる手。
雅美さんが好きなのに違う人と付き合ってたってことかな…?
私にはできないな…航さんが好きなのに違う男の人と付き合うなんて…。
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