先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「何突っ立ってるの。ほら、ご飯出来たから座って!」
航さんからパッと離れて、お義母さんの持ってるお盆を受け取った。
「あっ、おはようございます!私やります。すいません、お手伝いもしないで…」
「おはよう。あらありがと。花笑さんはお客さまなんだから気を遣わなくていいのよ。」
にこにこのお義母さんに和んで、お義父さんも来てみんなで朝食を頂いた。
海斗さんが焼いたという卵焼きは、やっとお義父さんに合格点を貰えるようになったという自信の逸品だそう。
食べてみると柔らかい歯ごたえに出汁がきいていてほんのり甘くとってもおいしかった。
感動して食べていたけど、お義父さんは一口食べて
「出汁が足りない・・・」
とポツリ呟く。
「ふん、親父の卵焼きにはまだほど遠いな。」
「うっ、今日は調子が悪かっただけだ!」
航さんが追い打ちをかけるように言うから海斗さんがふん!と拗ねてしまった。
「あ、あの、とってもおいしいですよ?」
思わず不憫に思って声をかけるけど、
お義母さんが「いつものことだから気にしないで」と笑っていた。
「こいつはまだまだ修行の身だから甘いことは言わないんだ。すぐ調子に乗るからな。」
そう言って海斗さんを見るお義父さんはすごく優しい目をしていて、父であり師匠である厳しさと優しさが垣間見れた。