先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「でも、花笑さんに言われた。…航兄さんのこと10年前から好きだったって、航さんは渡さないって…」
「そりゃそうだろ…」
「私だって子供の頃からずっと好きだったのに……」
泣きそうな顔をして俯く雅美を抱き締め慰めたい気持ちと、いまだに兄貴に未練がある雅美にイラつく気持ちが拮抗する。
「……じゃあお前、何で兄貴を追いかけ無かったんだ?」
「え?」
「兄貴が好きなら何で大学なり就職なり兄貴の近くに行こうと考えなかった?」
「それは………」
「それにお前付き合ってた男いるだろ?何で一途に兄貴だけ見てることできなかったんだ?別に兄貴じゃなくても良かったってことだろ?」
「違う!あの人は…浩二くんは、私が航兄さんのこと好きなの知っててそれでもいいって言ってくれて………寂しくて…。でも、もうとっくに振られたわよ…。」
不貞腐れたように言う雅美にやっぱり怒りの方が勝って今までの鬱憤も混ざり言い放った。
「お前も大概いい加減な奴だな!それで兄貴が好きだなんてよく言うよ!…それに比べて花笑さんは、一途に兄貴だけを思って追いかけて、振られてもめげずに兄貴の心を掴んだんだ。お前は花笑さんに叶わねえよ!」
「な、何よ!海斗のくせに!そんなに花笑さんがいいわけ?!私はただ海斗が……」
「おいっ、待てよ!」
雅美が言いかけで突然走り去ろうとするから咄嗟に腕を掴んだ。