先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
雅美said
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今日の海里(うみさと)はほんとに忙しかった。
普通のお客さんの上に航兄さんの結婚を聞きつけ次から次へとお客さんが入ってくる。
近所の人だったり、航兄さんの同級生だったり、私の友達まで来ていた。
航兄さんがもう帰ってしまってお嫁さんが見られないのを残念がりながら、ご祝儀とばかりに少し注文して食べては帰っていく。

ここはそれほど小さい地域でもないのに昔から団結力が強くて、ご近所皆家族みたいな付き合いをしている。
だからどこぞの娘さんが入学した、あそこの息子さんが結婚した、と聞き付けるとひと言お祝いを言わないと気が済まない。そんなあったかいこの街が私は好きだった。

でも今日はそれも上回る勢いのお客さん。きっと航兄さんは昔からここら辺では有名だったからそんな航兄さんのお嫁さんがどんな人か興味本位もあるだろう。
友達の真子が「航さんに会いたかった~。ねえねえ、航さんのお嫁さんってどんな人?」と聞いてきた。私は曖昧に笑いながら言葉を濁していたけど、航兄さんはすっごくモテたから私のように悔しい思いをしている人も少なくないはず・・・。

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航兄さんは子供のころから大きくてカッコよくて強くて、勉強もスポーツも何でもできた完璧な人だった。
私は子供のころから航兄さんが大好きで、よく海斗が作った料理を家に呼ばれてご馳走になるとき航兄さんがいないか探していた。
勉強が苦手だった私に航兄さんは「しょうがないな」と言いながらもやさしく教えてくれて、どんどん成績が上がっていくのを一緒に喜んでくれた。
「雅美は要領がいいからコツを掴めばすぐに理解してくれて教えがいがあるな」と言って頭を撫でてくれるのを幼心に頬を赤くしながら喜んだ。私はいつまでも航兄さんの隣で笑っていられると思っていた…。

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