先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「俺はこの街を出てやりたいことを見つける。それがどんな結果になろうとここに戻るつもりはない。雅美、海斗の事頼むよ。あいつすぐ調子に乗るからお前が見張っててくれ。」
「…うん…」
私が何を言っても無駄なんだなって悟った。
「頼むぞ」と言って頭を撫でてくれる大きな手。私は航兄さんがどんなに遊んでいても一番近くにいるのは私なんだって自惚れてた。航兄さんは一人この街を去るんだ…。
航兄さんと別れ帰ろうとしたら、海斗がひょっこり現れた。
「兄貴に振られてやんの!兄貴がお前みたいなお子様相手にするわけないだろ?」
「う、うっさい!バカ海斗!盗み聞きするなんてサイテー!」
「なんだよ!人んちの庭で堂々と告ってるお前が悪いんだろ!」
「何よ!海斗のくせに!」
「いっつもいっつも海斗のくせにってなんだよ!雅美のくせに!」
ワーワー言い合って、ぷいっと顔を逸らし走って帰った。
そういえば、海斗のおかげで告白して振られたのに涙も出なかった。
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それから十数年…。たまに帰ってくる航兄さんに想いがくすぶりながらも、寿司職人になるため頑張ってる海斗を叱咤激励し、お店も手伝ったりしていた。寂しくて、航兄さんが好きなままでもいいって言ってくれる人と付き合ったりもしたけど3年で別れた。
それから、誰とも付き合う気にならなくて今日まで来たけど…。