先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

「ご、ごめんなさい、航さん」

「ったく、慣れないヒールなんて履くからだ」

どうやらよろけた花笑さんを支えてるだけのようだけど、慌てて離れようとする花笑さんの腰を離さず、顎をすくいまるでキスするような仕草に周りのみんなは「わぁ」と湧いた。

「危なっかしいから、酒は一滴も飲むなよ。無様に転びたくないだろ?」

「は、はい…」

皆が見てるのも構わずにすごい愛おしそうな眼差しで真っ赤な顔をしている花笑さんに言い聞かせてた。
課長、言い回しはキツイのにその顔は反則でしょう…。
周りの女性陣はみんな赤い顔をして見ていた。
きっと(私も抱かれてあの顔で言われたい!)と思ってるはず…。

「なんか、主役を奪われたみたいね」

人だかりが割れて現れたのは置田君のお姉さんと婚約者さん。後ろに置田君もいる。
ちょっとこの展開に周りも緊張感が張り巡らされた。

「操さん!ご婚約おめでとうございます!いつにもまして素敵です!」

目をキラキラさせた花笑さんが私みたいに興奮して両手を組んではしゃいでいる。あれ?何だか拍子抜け。

「ありがとう。あなたも素敵よ。眼鏡姿も可愛いいけど、今も似合ってるわ。」

「あ、ありがとうございます・・」

花笑さんの髪をひとすくい取って妖艶に笑うお姉さんに恥ずかしそうに俯く花笑さん。
花笑さんもお姉さんも結構意外な反応に周りの皆は驚いていた。

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