先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
ぽーっとした頭で航さんを見上げると、眉間にますますシワを寄せた顔。
怒ってる?
スイッと私の持ってるグラスを取り上げ確かめるように口をつけた。
「お前、これ、酒だぞ!スクリュードライバーじゃないのか?中身はウォッカだぞ」
「え?でも渡辺さんがジュースだって…」
そう言って渡辺さんを見るとアタフタする姿が。
「あ、いや~、おかしいな~ジュースだと思ったんだけど?」
しらを切ろうとする渡辺さんを細ーい目で睨み付ける航さん。いきなり持ってたスクリュードライバーをごくごくとイッキ飲みして、空のグラスを渡辺さんにぐいっと渡す。
「妻は酒に弱いんだ。間違っても飲まさないで頂きたい。これで失礼する」
毅然と渡辺さんに言い放ち、私の肩を抱いたまま踵を返し出口に向かう。
今、つ、つまって言った?あの妻?
働かない頭で考えてたけど、航さんが大股でスタスタ歩くから、私は足をもつれさせながらついていくのがやっと。周りの人たちが何事かとこちらに注目してるのがわかる。
会場から出てエレベーターへ向かう。
私は転びそうで足を踏ん張って航さんを止めた。
「わ、航さん、ちょっと待って!足がもつれて…」