先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
余計いたたまれない感じになっていると、さっき花笑さんたちを乗せたエレベーターが戻ってきた。
エスコートしてくれた手は降ろされ、言葉もなく乗り込み日野さんが最上階のボタンを押す。
無言のままエレベーターは上がり、最上階へ着くと日野さんに先導されたままバーへと入る。
入った瞬間そこは大人の世界。
ムードのある極限まで明かりを落とされた照明。たくさんのお酒が浮かび上がるように照らされてるバーカウンター。テーブル席一つひとつにキャンドルが灯され、何人かの男女が静かにお酒を嗜んでいた。
そして何より、一面ガラス張りの眺めのいい景色。キラキラとした夜景が目に飛び込んでくる。
「わあ、きれい・・・」
思わず感動して呟くと、立ち止まっていた私の背にまた温かい手が触れる。
「こっち」
いつの間に機嫌が直ったのか、少し顔の緩んだ日野さんが私を窓際の奥へ誘導する。
そこは半個室になっていて、ソファーが置いてあり目の前はきれいな夜景。
二人並んで座るとすぐにオーダーしてしばしの沈黙。
また何か考えてるような日野さんが気になって夜景を楽しむどころじゃなかった。
オーダーしたお酒が運ばれボーイが去っていくと、「とりあえず乾杯」とグラスを合わせ一口飲んだ。