先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「なんで私に好きな人の事聞いて、日野さんは答えてくれないんですか?言えない人だから?」
「え?何それ?」
目を丸めてこちらを向いた日野さんに燻っていた思いが噴き出す。
「日野さんは…、日野さんは花笑さんの事が好きなんじゃないんですか?」
「・・・・」
凝視しながら固まっている日野さんを見て、私はなんてことを言ってしまったんだ!と後悔が押し寄せた。
「なんで、そんなこと思うの?」
頭を抱えていると思いのほか静かに聞いてきた日野さんに拍子抜けして思わず吐露した。
「え、…いつも日野さん、花笑さんを切なそうに見てるから…」
「…は、ははは、なんだ。俺もわかりやすいってことか…」
日野さんは力なく笑って一人納得したように呟き俯いた。
やっぱり…日野さんは花笑さんが好きなんだ…。
自分で言っといて愕然とする。
「うん、大事なことの前に言っといたほうがいいな。」
そう言ってまたジントニックを一口飲んで呆然としていた私の方を向いた。
「先に言っておくけど、それは過去の事だ。今は違う。それだけは信じてくれ」
真剣な表情に私は抗うことなくこくりと頷く。