先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

「確かに、松崎が営業部に移動してきたときから、俺は松崎の事が好きだった。何が切っ掛けがあったわけじゃない、自然と意識するようになったんだ。だけど、最初から松崎は山片さんの事しか眼中になかった。山片さんも付き合ってないくせに何かと松崎を気にかけて、何かあればすっ飛んで来るような人だった。二人の絆は深い。そう思わされた時に俺は告白することもなく諦めた。ただ、好き合ってるくせにいつまでもくっつかない二人にやきもきしてイラついてた。」

そう一息に言った後、小さく呟いていた。

「今思うと、山片さんの気持ちが少しわかる気がするけど…。」

日野さんも辛い想いを抱えていた。
課長の気持ちってなんだろう?じっと日野さんの横顔を見つめ聞いた。

「今は、花笑さんの事は?告白しなくて良かったんですか?」

「あいつ結婚するんだぞ?今更何を言うっていうんだ?それに、今は違うといっただろ」

ちょっと怒った声色で言われ肩が竦む。その両肩を掴まれ正面から顔を覗き込まれた。

「松崎のことはもう過去の話だ。今はもう何とも思ってない。それにあの二人がやっとくっついてくれてホッとしてるんだ。」

「ご、ごめんなさい」

真剣な表情に思わず謝った。

< 245 / 272 >

この作品をシェア

pagetop