先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「謝ってほしいんじゃない。俺が今、好きなのは・・・・」
言葉が途切れ、恐る恐る顔を上げる。
「知佳ちゃん、君だよ。知佳ちゃんが好きだ。」
「・・・!」
声も出せず目を見開き、日野さんを見つめた。
「う、うそ・・・」
やっと出た言葉はかすれた声になっていたけど、聞き取ってくれた日野さん。
「嘘じゃないよ。最初はただの後輩と思ってたけど、一緒に飲むようになっていろんな話をして、かわいいところをいっぱい見せてくれる知佳ちゃんを愛おしく思うようになった。でも最初は後輩としてのただの情なのかとも思って悩んだりした…。」
固まっている私の頬を日野さんの温かい手のひらが包む。
「俺の感情に気付かせてくれたのは山片さんだった。知佳ちゃんが他の男と付き合ったらどう思う?って。そんな単純なことも俺は気付かずにいたんだ。知佳ちゃんが他の男になんて、ましてや置田になんて取られたくない…。知佳ちゃんは?知佳ちゃんは俺の事どう思ってる?」
「わ、私…、私も日野さんの事、好きです。ずっと好きでした。誰にも取られたくない。」
溢れた想いが涙と共に零れていく。
頬に添えた手が涙を拭い、抱き寄せられた。
ああ、今、日野さんに抱き締められてる。
夢みたいだ……。