先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
なぜ、いつも俺にどやされてる小山が課長なのか?
それは簡単なことで、不思議がる営業部の面々に教えてやった。
「小山は取引相手を懐柔するのが上手いし機転が効く。難しい案件をいくつもやってもらっていた。それに人望もある。
人のことを良く見ていて、お前らも何かと小山に助けてもらったことがあるはずだ。俺の後任には小山しかいないと思っている。」
皆が小山を見る。確かに…と納得顔がほとんどだった。
小山も照れてヘラヘラと笑ってやがる。
「いや~、山片さん無理難題吹っ掛けるから~。何度挫けそうになったことか…」
「だから俺が常に叱咤激励してやっただろ。有り難く思え!」
これからの期待も込めてバシッと背中に気合いを入れてやった。
「いってえっ!」
涙目の小山に部内はドッと大笑い。
花笑の可愛がってた後輩、夏野も新人の横で笑っている。先輩になった夏野は少し頼もしくなって今年初めて指導係になった。
因みに小野田部長は専務に昇進。置田が将来を見据え、勉強の為専務付きの秘書としてついていった。
移動で来た奴もいて新しい体制に活気づくこの光景を花笑にも見せてやりたい…。
「……はぁ~」
目頭を押さえ、ため息を吐くが、落ち込んでいるわけにもいかない……。
着替えようと立ち上がったところに、ピンポーンとチャイムが鳴る。