先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「誰だ、こんな時間に…」
それほど遅い時間でもないのに一言文句を言ってモニターも見ずに廊下を出た。
カチャと玄関が開く音がして、鍵かけ忘れたか?と思って徐にその先を見ると思いがけない人物が立っていた。
「……え…」
言葉も出せずに玄関先で突っ立ってる俺を見て笑いかけるその人物。
「ただいま、航さん」
「……は、花笑!」
長かった髪を肩までバッサリ切り、いつもの眼鏡姿の花笑。
信じられない思いで一瞬目を見開いたが、思わず駆け寄ってかき抱くように抱き締め確かめた。
「ホントに花笑か?俺は幻を見てるのか?」
「フフっ、ホントに花笑です。帰って来ました。ただいま、航さん?」
俺の背中に腕を回し抱き締め返す花笑に、これは本物だと安心する。
「ああ…お帰り、花笑……」
花笑の肩にもたれながら安堵となんだかわからないものが込み上げる。
顔を上げもう一度花笑の顔を良く見ようと顔を近づけ髪を触る。
「ハイハイごめんよ~」
と、声がしてギョッとして見たら、俺達の横を両手に大荷物を持って通りすぎるお義父さん。
「え?お義父さん!?」
すっとんきょうな声を出してしまって固まっていると、その後ろからブランケットのかたまりを抱えたお義母さんが通りすぎた。
「相変わらずラブラブねぇ、あ、私達に気にせずやってちょうだい」