先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「………」
すたすたと入っていく二人に言葉も出ず見送ってしまった。
「私達も入りましょ」
花笑と目を合わせるとにっこり笑って促された。
「あ、ああ…」
なんだかわからない状況に付いていけずもリビングに入る。
「花笑、この荷物はどこに置いたらいいんだ?」
「あ、隣の部屋に」
お義父さんが荷物を持ったまま、花笑が駆け寄って隣の開かずの間を開けた。
書斎兼物置だったそこはすっかり様変わりしていた。
「まあ!すっかり子供部屋ね!旭く~ん、ほらあなたのベッドよ~」
小さなベッドにブランケットに包まれたまま置かれたものを除き込む。
「旭(あさひ)……」
すやすやと眠る小さな赤ん坊を見て頬が緩む。
そう、旭は俺と花笑の息子だ。
今まで散々一人寂しく感傷にふけっていたが、何てことはない。
1ヶ月前から里帰り出産の為実家に帰っていた花笑。
出産し、まだ1ヶ月ほど実家にいるはずだった。
「旭、とっても良く寝る子でね、夜も1回くらいしか起きないのよ。いい子でしょ?」
「ああ。…まだ1ヶ月くらい実家にいるはずじゃなかったか?」
隣に来て一緒にベッドを覗き込む花笑に向き直り、疑問に思っていると苦笑いの花笑。