先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「へへっ、航さんに会えないのが寂しくて、無理言って帰って来ちゃった」
「花笑……」
花笑も俺と同じように寂しく思ってくれていたことに感動を覚え見つめる。
「さ、私達は帰りましょ。お父さん」
「え、今来たばかりじゃないか」
「お邪魔虫はさっさと帰るのよ。ほら、旭に挨拶して!」
「あ、お母さん、今お茶入れるよ」
揉めてる両親に俺から視線を逸らし花笑が話し掛けるが、お義父さんは旭になにやら愚痴ってる。
「今来たばっかりなのになぁ、なあ旭~。もっとじいじと一緒にいたいよなあ~…」
光る眼鏡の奥は、目尻を下げデレデレの今まで見たことの無い緩んだ顔。
あの厳格だったお義父さんの変わりように驚愕して凝視してしまった。
「いいわよ花笑。せっかく帰って来たんだから、航くんとゆっくり積もる話しでもしなさい?まだ産後間もないんだから無理しちゃダメよ?」
「うん、わかってる」
「お母さん達帰ったらもうあなた達二人しかいないんだからちゃんと協力して子育てするのよ。今日から親子3人、子育て楽しみなさい。」
「はい」
「航くんもよろしく頼むわね?」
「あ、はい」
さすがお義母さん。しっかり花笑にアドバイスをしてくれる。
お義父さんに気を取られて話し半分しか聞いてなかったが、俺も子育てに参加するつもりだ。
花笑と二人で旭を育てていく。