先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「任せてください」
満足そうに頷くお義母さん。
「何かあったら相談乗るから、抱え込まないようにね。いつでも協力するから」
「うん、ありがとうお母さん」
安心したように笑う花笑。
「あさひ~またばあば達来るからね~いい子にしてるのよ~。ほら!お父さん!帰るわよ!」
「あ~っあさひ~!」
お義母さんに引きずられながら帰っていくお義父さん。
玄関まで見送って戸が締まるまで叫んでいた。
「凄いな、お義父さん…」
「うん、初孫がよっぽど嬉しかったみたい。実家でも家にいるときは片時も旭から離れなかったの」
呆然の俺ににっこり笑う花笑。部屋に戻り、旭の顔を除き込む。
良く寝ている。なのになぜか眉間にシワを寄せていた。
「フフっ航さんみたい」
「ん?そうか?」
「そうよ、いっつもここにシワを寄せてた」
そう言って俺の眉間に触れるから、手を掴んで引き寄せた。
抱き締め、はぁ~と息を吐く。
「…ただいま、花笑」
「え?どうして航さんがただいまなの?」
首を傾げる花笑の顔を見つめねだった。
「いいから、言ってくれ…。ただいま…」
しょうがないな、とでも言いたげな顔をした後、花笑は満面の笑みでこう言った。
「お帰りなさい。航さん」
「……ああ、ただいま、花笑…」
毎日、これが聞きたかった…。
ただいま、お帰り、と言い合うのがどれ程幸せなことか、身を持って実感した。