先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

「ふふっありがと」

と言ってお酒を一口飲みまた話し出す。

「私は最初総務部に配属されたんだけど、久しぶりに会った航さんはその頃営業部のエースと言われていて、ますます素敵になっていたの。
追いかけてきた私のこと、最初はびっくりしてたけど会うたび声をかけてくれてそれが嬉しくて。
私、やっぱり好きだなって再認識して、もうそれだけで満足していたんだけど…」

ふと、花笑さんの顔に陰りが差す

「私と山片さんのこと噂になってたみたいで、ある日先輩に呼び出されてそこで初めて会ったのが山片さんの彼女、操さん。」

「彼女、いたんですか…」

「山片さんは素敵な人だから…恋人がいるのは当たり前で、でも考えないようにしてたから…目の前に彼女がいることにショックだった…私なんかが太刀打ちできないくらい凄く素敵な人で、諦めなきゃって思ってたの。」

花笑さんも私みたいに好きな人を諦めようとしてたんだ…。なんだか自分のことのようで胸が締め付けられる。

「それからなるべく山片さんを避けるようにしていたけど、おとなしくしてても目立たないようにしてても目につくみたいで、先輩達に何かと嫌がらせされてて…1年ぐらい続いたんだけど…」

「そんなひどい、好きな人諦めなきゃいけない上に嫌がらせされてたなんて…!」

哀しそうに目を伏せる花笑さん。
話からいくと最初は天真爛漫だった花笑さんも嫌がらせのせいで段々と目立たないように大人しくなって行かざるを得なかったのだろう。
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