先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「なんだ?なんか言いたそうな顔してるが?」
「…お姫様抱っこ…」
俯いて、小さな声で言うから聞き取れなかった。
「あ?なに?」
聞き返すと、ばっと顔を上げたちょっとふてくされた顔で、
「今のお姫様抱っこして、颯爽と歩く、こ…山片課長と西川さんが、お似合いで、なんていうか、その・・」
しどろもどろと説明しているが聞いていても埒があかない。
「なんだ、はっきり言え」
俺にしては恐ろしく冷静に言ったつもりだが、花笑はびくっと肩を揺らし
「その、羨ましくて…嫉妬したんです!」
びくびくしながら、はっきりと言った花笑はそのまままた俯いてしまった。
「・・・・」
「嫉妬?さっきは仕方ない状況だったと思うが?好きでここまで運んできたわけではない。」
そんなことでも嫉妬するのか?まったく理解できん。
眉間に皺が寄る。
「わ、分かってるんですけど。なんか目の前で見ちゃうと…」
しゅんとしている花笑を見てため息が出る。
呆れながらも頭を撫でてやる。
「お前もこの間は俺にしがみ付いてただろうが」
「それはいいんです!こうくんあんまり抱きしめてもくれないから…」
なんて、かわいい事言ってくるから、ここが会社の廊下なのも忘れて花笑を抱き寄せた。
だが、直ぐに花笑がパッと離れて
「西川さんもう大丈夫みたいだから課長は仕事に戻ってください。私が起きるまで見てますから」
こちらを見ないまま早口で言ったと思ったら、そのまま医務室に入っていった。
「・・・なんなんだまったく・・」
しばらく医務室に入ろうか迷ったが、あれからだいぶ時間もたってるため仕事に戻ることにした。