先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「……」
唇をツンと尖らせてプイッと目を反らす。
おいおい、なんだ、かわいい拗ねかたすんな~
子どもみたいで中3の頃の花笑を思い出す。
プライベートでしか見せないコンタクトと春らしいワンピース姿が似合っているが余計に幼く見えた。
「いいのか?そんな態度取って。映画、行かなくていいのか?」
「い、行く!行きます‼」
わざと意地悪なことを言ってにやりと横目で見てやると慌てて顔を上げ詰め寄ってくる。
フッ勝ったな…昔から花笑の扱いにはなれている。
天真爛漫で思ったことは口にも顔にも出るが、冗談で言ったことも素直に解釈する。
素直過ぎて心配になるほどだ。
「なら、拗ねてないで行くぞ」
拗ねてると言われるのが嫌なのかまたムッとしてるけど,
「ほら」と言って手を出すと、最初キョトンとした顔から意味がわかったのか、満面の笑みで手を繋いできた。
嬉しそうに横を歩く花笑を見やりながら、映画館へ向かった。