先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
好きか嫌いかと言えば好きだし、愛しいとも思う。
ただ、こいつのことは中3の頃から知っているし、教え子と家庭教師の間柄だったせいか、今だに子ども扱いしてしまう帰来がある。
一人の女性として見ているのか、やはり妹のような家族的な意味合いで好きなのか、自分でもわからない。
俺のせいで辛い目にも合っていたのに、花笑はずっと一途に想い続けていてくれる。
それをいいことに、曖昧な関係を続けてしまっていた。
『横からかっさらわれますよ!』
「………」
花笑が他の男の元にいったら……?
俺は……
「…くん、こうくん!」
「ん?ああ…」
「どうしたの?急に怖い顔して……?」
どうやら考え込んで眉間に皺がよってしまったらしい。花笑が俺の眉間に指を伸ばして撫でる。
思わずその手を掴んだ。
きょとんとした顔をして首を傾げた仕草、好きだな、と思う。
「久しぶりに花笑の手料理が食べたい。食わせろ。」
「…うん!」
ちょっと横暴な言い方になってしまったが、花笑は気にも留めずまた嬉しそうに笑って返事をする。
この手が、この笑顔が、他の男の手の中に……
なんて、考えたくもない…。