先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

「それは、もしお前に男が出来たらって時のことだ」

「そんなことっ!あるわけない!」

かぶりを振って否定してくる

「もしもって話だ」

「じゃあ…もしもこうくんに、誰か好きな人が出来たら…?」

また零れ落ちそうな涙をためて、こちらを見つめてくる。
不安で揺らめく瞳を見つめたまま、そっと頬にふれ、ゆっくりと瞬きをした拍子に流れる涙を拭った。

「こんなに手のかかるやつがいるのに、他に構ってる暇はない」

「?」
何の事だかわからない顔をして首を傾げているから言い直した。

「お前がいるのに他の女なんか目に入らないって言ってるんだ」

寄りかかっていた体をガバッと急に起こし、これでもかって位瞳を見開く。

「い、いま、なんて・・?」

信じられないという顔をして固まっている。
まだ俺に言わせる気か?
チッと心の中で舌打ちをしたが、今まで不安にさせてきた俺が悪い。
花笑を安心させてやりたい思いでひとつ息を吐き、ゆっくりと言った。

「お前が、好きだ。…まだ信じられないか?」

「だって…初めて言ってくれた…」

見開いた瞳から涙がまた次から次へと溢れてくる。

「今まで何も言わずに悪かった…自分の気持ちに漸く気付いた」

泣き笑いのような何ともいえない顔をして花笑は手を伸ばし俺の首に抱き着いてきた。

「すき、大好き!こうくん」

ギュッと苦しいほど抱きしめてくる花笑を抱きしめ返し、また泣き出した背中を摩ってやる。
ほんとに、よく泣く。


・・・泣かしてんのは俺か・・・
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