先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「逃げるなって何!」
知佳ちゃんはなんなのあれは!と、怒ってくれる。
有り難く思いながらも私はふうっと小さくため息をついた
「知佳ちゃんごめんね」
と言って、山片課長の後について隣のミーティングルームに入った。
後ろを向いて扉を閉めたら、ぬっと顔の横に腕が伸びてきて、気付いたら課長に後ろから両手で囲まれる形になっていた。
ドキドキして、後ろを向いたまま呼び掛ける。
「あ、あの、山片課長…?」
職場ではやはりけじめをつけるためなるべく山片課長と呼んでいる。
「さっきのはなんだ?」
「え?」
「合コンとかなんとか言ってた様だが?」
不機嫌そうな低い声で言ってくるから、怒っているのかと思って恐る恐る後ろを振り向くと、怒っている、というより戸惑ってるような揺れる瞳と目が合った。
「こうくん…?」
「お前が合コン行くとか…考えただけでムカムカする…」
チッと舌打ちして目を逸らされた。
それってもしかして…
「ヤキモチ……?」
反らされた目を覗き混んで聞いてみると、頭の上に手を置かれ目を隠された。
その手を両手で避けると囲っていた腕を自分の腰に置いてそっぽを向くこうくん
「ああ、そうだよ」
と言って耳がほんのり赤い姿を見て嬉しくてなった。
こうくんがヤキモチだなんて始めての事だ。