先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

店の外に出て日野さんにお礼を言った。

「日野さん、ありがとうございます。私たちの分まで払って頂いて」

「ああ、気にすんな。他に出してくれるパトロンがいるからな。後で請求してやる」

にやりと悪い顔で笑った。

「えっパトロンって？」

「夏野、タクシー来たぜ」

置田君がタクシーを止めて待ってくれてる。

「あっでも花笑さんが・・・」

花笑さんが心配で言いよどんでると、
「大丈夫だ、すぐ迎えに来るから」と日野さん。

「あの、迎えって誰が？」

「あー家族？」

なんとなく歯切れ悪く答えた日野さん。

「花笑さんって一人暮らしじゃ・・あっもしかして彼氏？」

「おまえ、どこまで知ってる？」

急に鋭くこちらをにらんでドギマギした。

「えっいや、彼氏みたいな好きな人がいるとしか」

「そうか、ま、気にすんな。早く帰れ」

ちょっとほっとした感じで目をそらした。

「ほら、夏野いくぞ」

置田君に引っ張られてしまったので小さく会釈してタクシーに乗り込んだ。
出発してすぐ後ろを振り返るとちょうど日野さんたちの前に白いセダンが止まった。

あの車どこかで見たような…

角を曲がってしまったので誰が乗ってたかまでは見えなかった。