先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
様子がおかしいことに気付いて声をかけられたが答えられない。
腕を触れられビクッと反応してしまった。
手を離し、置田くんはじっと私を見ていた後、静かに話した。
「あの、俺、姉貴とは結構仲が良くて、花笑さんも優しい先輩で、二人が仲違いしてるって知って俺ちょっと辛くて。
もし、それが誤解だったら解いてほしいと思うんです。そうやって辛そうにしてる花笑さんをみてるのは嫌だというか…」
「置田君…」
辛そうに話す置田君を思わず見返した。
「…ごめんね置田君。お姉さんを悪者にしてるみたいで…」
置田君にしたらお姉さんを悪者にされて我慢ならなかったのかもしれない。
「いっいえっ、そうじゃないんです!姉貴も悪いところがあったと思うんです!何て言えばいいのかな…?その、どうせなら仲良くしてほしいんです!難しいかもしれないけど。姉貴も花笑さんも大事なんです!」
一生懸命説得してくれる置田君にほだされて、いつの間にか体の震えも止まっていた。
「置田君…ありがとう…」
「姉貴と会ってくれますか?」
「…そうね、機会があったら…。まだ、気持ちが付いていかないかもしれないけど…」
「もし、姉貴になんかされたら今度は俺が守りますから!」
不安はあるけど、ずっと操さんを恐れたまま、こうくんとの付き合いを隠し通していくのかと思っていたから、ここでちゃんと決着をつけた方がいいのかもしれない。
心配させてしまった申し訳なさもありながら、切っ掛けを作ってくれる置田君に感謝した。