セナカアワセ
歌にはその作者の気持ちや強い思いが短く、でも中身は深く書かれている。




それを物語を通して読むのが、悲しかったり、嬉しかったり、感情を揺すぶられる。



それに、その歌に隠された本当の気持ちとかを知ると、切なくなったりする。



平安時代の作品は、辛い恋が本当に多くて、その分私も同じ気持ちになって読んでしまう。



私が熱く語りすぎてるかな?と途中で思ったけど、遙人は真剣に聞いていた。



「だから、それぞれいろんな恋の形があるから1番なんて本当は選べないんだ。でも、最近凄く印象に残った歌があったの。」




­­【いとせめて 恋しきときは むばたまの 夜の衣を 返してぞ着る】




小野小町の歌だ。



「この歌の意味は、どうしようもなく恋しくあなたを想う時は、夢の中で出会えるように、衣を裏返して寝ます。っていう歌なんだ。」



「なんで衣を裏返すの?」



「夜の衣って言うのは、寝る時に着るもので、それを裏返して着ると、夢の中で恋しい人を夢に見るって言うのがあったの。」



「へーーー。本当に会いたいんだね。その人は。」



「うん。そうだと思う。初めてこの和歌の意味を知った時、こんなに愛されている人は幸せだなーって思った。でも、男の人は全然自分が愛されてることに気づいてないんだもん。昔は何人も女の人と結婚できるけど、やっぱり好きな人には自分だけを見てもらいたいっていう、そういう気持ちがあるんだよね。昔も今もそれは変わらないよなって思って。」



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