セナカアワセ
瞬間、手を振り払われて、出口の方に走っていく遙人。



「えっ!?ちょっ、遙人!?!?」



払われた右手を左手で抑えながら叫んだ。




人混みの中に走って行ってしまって、遙人の姿はもう見えない。



「那美佳っ!?どうしたの?」



会長と栞里が手にお好み焼きを持って帰ってきた。




「遙人が!!急に走って行っちゃって。なんか、由果っていう女の子が話しかけてきてから顔色悪くて、、、」



「今、由果って言った?」



「えっ、あっ、はい。」



私がそう言うと会長はマジかよと言って頭を抱える。



「どうしたんですか?」




「、、、、、、由果は遙人の元カノだよ。」




「「元カノ!?」」




「そう。ただの元カノだったらいいんだけど、あいつは、、、、、、、、、」




最後言葉を濁す会長。




私はさっきの遙人の具合悪そうな顔が忘れられなくて、



「会長!!何があったのか、教えて!!」




会長の肩を掴んで言う。




会長はため息をついて、話し始めた。



「中学の時、遙人はバスケ部に入ってたんだ。」



バスケ部?



遙人が?




「今の遙人を見れば運動なんて無縁な感じだけど、中学の時は本当にバスケばっかりやってたんだ。何回も大会でベストプレイヤー賞とか貰って。」




遙人は本当に凄い選手だったって会長は嬉しそうに言った。



今の遙人はThe理系男子って感じで、走っている姿すら見たことないけど。



でも確かにあの身長でバスケやっていたら、かなり活躍できる。



そんな遙人に一目惚れしたのが由果ちゃんだった。



由果ちゃんは吹奏楽部で、女の子らしい容姿から、誰が見てもお似合いのカップルだったらしい。



「でも中3の冬、進路の話をした時にお互いすれ違った。遙人はもっとバスケの強いところに行きたいって、私立の強豪校を志望した。そのために頑張ってたきたのを俺は知ってたんだけど。」




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