セナカアワセ
突然、懐かしい声が聞こえた。





懐かしいと言っても、聞きたくなかった声。




心臓がドクンと嫌な鼓動になっていく。




隣にいる那美佳は誰だろうと、俺の方を見ていた。




久しぶりなんて、そんな馴れ馴れしく話してくる由果。



俺はなんて言ったらいいか分からなかった。




何を言われるんだろう。



また嫌な過去が頭の中を支配する。



「遙人ったら、なんでそんなにテンション低いの?久しぶりに会えて、私は嬉しいのに。」




本当に?




そんなわけ、、、、ないだろ。




あの事故のこと、言われた言葉、全てがトラウマの俺に追い討ちをかけるように話続ける由果。




「隣にいるの、彼女さんですか?遙人のこと、よろしくお願いしますね。意外とおっちょこちょいなので。」



そう言うと、またねと帰っていく由果。



おっちょこちょい?



俺が?



俺がそうだから、あの事故が起こったって、そう言いたいのか?



頭の中がぐちゃぐちゃになって、気がついた時には走り出していた。



那美佳の手を振り払って悪かったなんて、そんなことも考えられないくらい混乱していた。




走って走って、気づいたらいつもの公園。



バスケットコートに1人立ち尽くすと、




「っ、、、、結局無理じゃん。過去は、どうやっても消えないじゃん。、、、、、、何が過去に囚われないようにだっ!!絶対、忘れることなんて許されないのに!!」



どんなに俺が悪いんじゃないと言われても、俺がきっかけで起こったということは変えられない。



頭の中から、



車に跳ねられる由果の姿が、



道路に横たわる姿が、



手や腕に出来た青い痣も、



ベッドの上で俺の方を見る目も、



絶対、忘れられない。




これからずっと、



あの時の胸が張り裂けそうな気持ちを無くすなんて出来ない。



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