セナカアワセ
放課後。



栞里はいつも通り会長と帰って行った。



一緒に帰ると言ってくれたけど、ちょうど返さないといけない本があったから断った。



もし、図書室にいたらどうしよう。



いないことを願って、そっと扉を開ける。



周りを見渡すと、ちらほら本を返しに来た人がいるだけで、遙人の姿はなかった。



知ってる人もいないし、大丈夫かな?



カウンターに行くと、ミステリー小説を読んでいるのか、難しい顔をした先生がいる。



「先生?これ返しに来たんだけど。」



「あー!那美佳ちゃん!あけましておめでとう!」



「おめでとうございます。ミステリー小説ですか?」



「うんうん!面白くって、お正月中ずっと読んでた!!」



いつも通り笑顔の先生。



私はそっとカウンターそばの椅子に座った。



「ん?今日は奥の席じゃないの?」



珍しそうに私に聞く。



「はい。、、、、、、なんとなく。」




そう言うと、先生がクスッと笑った。



「そこの席は私が悩み相談を聞く席なんだよ。カウンターと近いからか、そこに座る生徒によく相談されるんだー。、、、、、、那美佳ちゃんはないの?悩んでること。」



そう言われて、何から話していいか分からなかったけど、私が知っている先生で1番信頼していたから、相談してみよっかって思った。



いつまでもこのままじゃいけないし。



私は、ゆっくり話始めた。



「、、、、、、大事な友達を、傷つけてしまったんです。かける言葉を間違えて。次に会ったら、謝ろうと思うけど、また伸ばした手を振り払われたらって思うと怖くて。」



私の言葉にうんうんと頷く先生。



嫌な顔をしないで聞いてくれるのが嬉しかった。




「嫌な過去を思い出したり、余計なことまで考えちゃって。、、、親友も気を使ってくれているのに、私の気分は落ち込んだままで。申し訳ないって思うけど、なかなか気持ちが上がってこないんです。全然、、、やる気が起きない。」


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