【完】さつきあめ

「宮沢さんは、ゆりさんと付き合ってるじゃないですか?」

「まぁゆりとはずっと噂あったけどね。
でもゆりがあんたにすごい怒ってるって話と、実際今日も来てるじゃない」

「来てる?」

「VIPに。会長。あんた指名で」

シーズンズと違い、THREEはVIPルームがふたつある。
どちらも同じ料金でどちらも同じ間取りだが、シーズンズより少しだけ豪勢で、値段も少しだけ高い。
誰かが双葉とONEのVIPルームはもっとすごいんだよ、と言っていた。
こんな広い間取りなら、なんだか落ち着かなくてわたしなら端っこに座る。
けれど目の前の男は、さも当然と言った風に真ん中に足を広げて座る。

どんな場所にいても、この人はそんな人だった。

「よう」

手を挙げて、へらへらと笑いながらこちらを見る。
テーブルの上には煙草と、高級そうなグラスにウーロン茶が注がれていた。

「会長~!本日はご来店ありがとうございますぅ~!何かありましたら何なりとこの小林にお申し付け下さいませ~」

調子の良い小林があからさまなゴマすりを見せる。
…ほんと、この人。

「さくら、座れよ」

< 353 / 598 >

この作品をシェア

pagetop