【完】さつきあめ
「宮沢さんは、ゆりさんと付き合ってるじゃないですか?」
「まぁゆりとはずっと噂あったけどね。
でもゆりがあんたにすごい怒ってるって話と、実際今日も来てるじゃない」
「来てる?」
「VIPに。会長。あんた指名で」
シーズンズと違い、THREEはVIPルームがふたつある。
どちらも同じ料金でどちらも同じ間取りだが、シーズンズより少しだけ豪勢で、値段も少しだけ高い。
誰かが双葉とONEのVIPルームはもっとすごいんだよ、と言っていた。
こんな広い間取りなら、なんだか落ち着かなくてわたしなら端っこに座る。
けれど目の前の男は、さも当然と言った風に真ん中に足を広げて座る。
どんな場所にいても、この人はそんな人だった。
「よう」
手を挙げて、へらへらと笑いながらこちらを見る。
テーブルの上には煙草と、高級そうなグラスにウーロン茶が注がれていた。
「会長~!本日はご来店ありがとうございますぅ~!何かありましたら何なりとこの小林にお申し付け下さいませ~」
調子の良い小林があからさまなゴマすりを見せる。
…ほんと、この人。
「さくら、座れよ」