【完】さつきあめ

朝日は小林の言葉を無視した。
座れと言われたから、テーブルを挟んだ丸椅子に座った。
本来指名の女の子はお客さんの隣に座る。
でもわざと丸椅子に座ってやった。
朝日との電話以来、いきなり光とわたしは離されるようにTHREEへ移動になった。
そして光の突然の引っ越し。この人が裏で関わっているとしか思えなかった。
けれどあれから連絡もなかったし、会う事もなかった。それに安心していたのに、突然の来客ってわけだ。


わざわざ自分のお店で、自分の雇ってる女の子を指名してお金を払う。
ご苦労様な事だ。

「会長~、フルーツ盛りでもお持ちしましょうか~?」

「小林、うるせぇから出ていけ」

「それはそれは失礼しましたー!ではではごゆっくり!」

朝日に睨まれると小林は逃げるようにその場を去り、VIPルームにはわたしと朝日だけが残される。

「まぁ何か飲めよ」

「別にあなたに売り上げを上げてもらいたいと思ってないので、お茶でいいです」

キャストのグラスを取り、高級そうな瓶に入ったただのウーロン茶を注ぐ。

「相変わらずだな」

くくっと朝日は面白そうに笑った。
何が面白いのか全然わからない。

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