【完】さつきあめ

「何か用ですか?」

「ただ飲みたい気分だっただけだ、んな言い方はねぇだろ」

「飲みたいのなら自分のお店じゃないところで飲めばいいでしょ?
それかゆりさんのお店で飲めばいい」

「ゆりは誰かさんと違って忙しいからな」

朝日の言葉にカチンとくる。

「悪かったですね、暇で。でもこれから指名がたくさん来るので忙しいから、さっさと帰ってくださいね」

言い返したら、ははっと朝日はまた声を出して笑った。
いちいち癇に障る人だ。
わたしは朝日のグラスにアイスとウーロン茶を入れて、ドンっと大きな音を立ててテーブルに置いた。
良からぬ噂が立つ。
ただでさえ光との噂は系列に回っているのに、朝日がわたしを指名で飲みにきていたら、あらぬ噂を立てられるじゃないか。
それが回りに回ってONEのゆりの耳に入ればなおさら厄介だ。
身に覚えのない事で人に恨まれたくない。

「THREEはどうだ?」

「どうもこうも、普通に仕事してますよ」

「先月は凜に負けてるじゃねぇか。それがお前の普通か」

この人は何でこうやって、人の心にぐさぐさと刺さる言葉を吐けるのだろうか。
しかも痛いところを突いてくるから、たちが悪い。

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