【完】さつきあめ

「いいことを教えてやるよ」

「いいこと…?」

朝日の口から出る‘いいこと’は悪い予感でしかなかった。

「有明は今女と暮らしてるよ」

一瞬固まって、朝日の瞳を見つめる。
いま、彼の口から出た言葉の意味を理解する事が出来なかった。
有明は今女と暮らしてるよ
光は確かにわたしと同じマンションを出て行った。それが、今は女と暮らしている?

「嘘!!」

朝日が嘘を言っているとしか思えなかったし、嘘だと信じたかった。
光はわたしを好きだと言った。待っていてほしいとも。あの光の言葉が嘘だったなんて信じない。

「嘘じゃねぇよ。あいつの彼女だろ」

「そんなの絶対嘘!…だって光は…」

「有明はお前が好きだって言ったってか?
そんなの信じちゃって本当にお前は純粋だねー。あいつの過去なんてお前何も知らねぇだろ。本来有明はそういう奴なんだよ。お前の事も所詮は遊びでからかってたってだけだって」

「なんで…なんでそんな嘘つくの…?あたしの知ってる光はそんな人じゃない…
光はあたしに待ってろって言ってた…」

「お前よりずっと有明の事はわかってるつもりだよ。
好きだったとしても、環境が変わればすぐに心なんて変わっちまうもんなんだよ。

それにお前ゆいと仲良くしてるらしいな?」

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