【完】さつきあめ
「………」
否定しない事が、光の答えだった。
「勝手にマンション引っ越して、あたしがTHREEに移動するのも知ってて黙って…。
たった1ヵ月で新しい彼女作って、どうせ全部今まで言った事も嘘だったんでしょ?!
あたしの事好きだって言ってくれたのも…ぜんぶ、ぜんぶ、嘘…」
「夕陽…ごめん…」
「ごめんなんて答えになってない!
じゃあ宮沢さんの言った事は全部本当だったんだね。
ゆいとセフレって事も…!あたしの事なんてからかって遊んでただけなんだね!」
「宮沢さんから聞いたのか?」
朝日の名前を出したら、光がゆっくりと顔を上げた。
見たこともない、険しい顔だった。
「誰から聞いたなんてどうでもいいことなんだよ!光…ひどいよ…」
黙り込んでいた光の態度が急に変わった気がした。
「別に
俺って最初からこういう奴だから」
開き直るように、わたしを見下ろした。
その冷たい瞳。光はそんな朝日のように冷たい目をするような人ではなかった。
今まで、わたしの知ってた光はどこにもいないように感じた。
「遊びっちゃー遊びだったよ」
「なっ…」
「何かお前が真剣に俺の事好きだって言ってきたから、お前みたいに純粋な奴俺にとっちゃー珍しいし。
別に彼女がいようがいまいが誰とでも俺はヤれるし、元々そういう男だったんだけどね。
お前も俺が好きで、俺に抱かれたいんだろ?いいよ、今からホテルでも行こうか?」
光の右手が、わたしの頬に触れようとして、反射的にそれを振り払った。
そして思いっきり頬を殴った。
光から出た信じられない言葉たち。理解するつもりもないし、理解も出来ない。
肩が震えて、涙がぼろっと零れたら、もう止まらなかった。
けど、光はその涙をもう拭ってはくれなかった。