【完】さつきあめ
バースデーのイベントで同伴でもろくにご飯は食べれなかった。
わたしはやっぱりプレッシャーに弱い。
ろくに腹に何もいれずにお酒ばっかがぶがぶ飲んでいたから、さっきまで具合いが悪くて潰れていた。
でもプレッシャーから解放された今、お腹が小さく鳴った。

「何か食いにいくか!
お前の誕生日とナンバー1のお祝いって事で」

「最初からそれを目当てで待ち伏せしてたんでしょ?」

「何かお前…一気に冷めてますます可愛げのねぇ女になったな」

「あたしをここまでやさぐれさせたのは、どこの誰なんだか…。
まぁ今日は宮沢さんとやりあう元気もないから素直にご飯は行くよ。
どーせ家に帰ったって1人なんだから」

「お。じゃうち泊まるか」

「絶対いや」

夜の世界は容易く人を変える。
あの日、抜け殻のように落ちたわたしは、一生懸命さとか、自分の中にある純粋さをすべて封印した。

お伽話のようにずっと一途に想い続けていたら、恋は叶うと信じてた。
でも現実は違った。
どんなに願ってもこの手の中にはつかめないと知ってわたしは19歳になったのだ。

「夢、かなう…なんてね…」

「何か言ったか?」

「何も言ってません」

「何か食いたい物あるー?」

「なんでも。がっつり食いたいです」

「がっつりって…。お前男か…」

朝日が連れて行ってくれたところは朝方までやっているらしい焼肉屋さんだった。
韓国人の夫婦が営んでいて、奥さんが人懐っこい笑顔と片言の日本語で「朝日くん、ひさしぶりだねー」と言った。


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