【完】さつきあめ
その日は美優が休みの日だったらしく、「がんばってね!」と可愛いスタンプと共にラインが入ってきた。綾乃はわたしと同じレギュラーなのでほぼ毎日出勤で、その日は昨日の約束通り両手いっぱいの紙袋を持ってきた。軽い服屋さん状態になっていた。それでも昨日の約束を忘れないでいてくれた綾乃の気持ちが嬉しかった。

「うわぁ~…すご!!いいの?綾乃ちゃん」

「もちろん。全部さくらにあげるつもりで持ってきたから」

「ありがとう!でもこんな高そうなのばかり…ほんとうにありがとう」

「いいってことよ
あ、おーい!高橋!どれが似合うと思う?」


オープン前の店内のテーブルでワンピースを広げて、3人であーでもないこーでもないと話をしていた。

「しかし綾乃さんも自分には似合いそうもない服をよく何着も買いましたね…」

「るさい!わたしだって…似合わないのはわかってるけど可愛いのとか可愛いのとか着たくなる日だってあるのっ!
…結局似合わなくてクローゼットの中にしまいっぱなしになるわけなんだけどさ…」

何着か手に取り、高橋はわたしの体に合わせていく。
こうやって見ると、こいつ美容系の仕事向いてるんじゃないかって思えてくる。
…スキンヘッドだけどさ…。鼻にピアスなんて空いてる見た目はただのチンピラそのものだけど。


「さくらは綺麗だからなんでも似合うわよ」

「まぁスタイルいいし、胸はないけど何でも着こなせそうではあるな」

「高橋くんっ!それセクハラなんだけどっ!
気にしてるんだからはっきり言わないで!」

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