【完】さつきあめ
⑰
あのお花見から数日。
THREEの空気は何となく変わっていった。
凛はいつになく頑張っていて、ゆいは相変わらずマイペースだった。
でも何となく凛が空回りしているように見えた。
わたしはお店に早くから来て、高橋とカップラーメンを呑気にすすっている。
「何か店でカップラーメン食ってると深海さんを思い出すなぁ」
「あの人いつもカップラーメン食べてたもんね。
てかこれ辛っ」
流行りの韓国のカップラーメンを買ってみたら、思ってた以上に辛くて、舌がびりびりと痺れた。
「さくら、同伴は?」
高橋の厳しい視線が向けられる。
最近では同伴をほぼ毎日している事が当たり前になっていて、たまに同伴をしない日があると、こうやって高橋にぐちぐち言われる。
「今日は同伴ありませーん」
「ゆいは同伴皆勤だな…」
「もうああなったら才能だと思うよ。ゆいって営業も全然しないし、アフターも行かないし、お酒も飲まないのに…」
「ゆいは、義理とか人情が全然ないな。
自分本位って感じ」
「それなのに、結果が出せてるからゆいはすごいんだよ……」
とてもじゃないけど、ゆいのスタイルで営業をしていたら、わたしは今の成績を維持出来ない。凜もそれはきっとわかっていて、焦っているのだと思う。
圧倒的な才能。わたしたちが必死で走り抜けている間に、すーっと抜かしていってしまう感覚。本人は望んでもいないのに、いつの間にかゴールしちゃう感覚。それをずっとゆいに感じていた。