【完】さつきあめ
ホールを見ていると、実に面白い。
凛とゆいの接客は正反対なのだ。
原田もよく、ここまで正反対の女に手を出したな、と考える。

けれど、わたしは凜の接客は嫌いじゃなかった。
お客さんの興味がありそうな話題は全部頭に入ってるし、媚びを売っているわけでもなくスマートで、どこか知的にも見える。
それに凜はヘルプに着く女の子にもちゃんと気を遣う人だ。
もちろんそれはわたしにも。
きちんとヘルプに着けばお礼を言ってくれるし、ヘルプの女の子たちが嫌な思いをしないように配慮してる。

凜は悪い奴じゃない。いつか光が言っていた。
そう、彼女はプライドも高いし、気も強いが、悪い人ではないのだ。
自分がどう立ち回れば、お店が最善に回るか考えて立ち振る舞いの出来る人なのだ。

それに比べ、ゆいは違う。
最近になってわかってきた事なのだが、ゆいはヘルプに対しての配慮が全く出来ないタイプだった。それでキャストもめ事を起こす事も最近多くなってきた。
そしてたちが悪い事に、ゆい自身がそれを意識してやってる事でないという点だ。
無意識でやっている。
だから無意識に敵を増やす。
ゆいが悪い人でない事もわたしは知っている。
それでも女の子の集団の中に入ると、わかりやすく嫌われるタイプなのだ。


「てんちょー、ゆいちゃんのお客さんなんとかしてくれませんか?」

「あー…うんうん、本人にも言ってるんだけどねぇー…」

「あたしもゆいちゃんの席につくの、本当に嫌なのっ!
ゆいちゃんって全然あたしたちに気も使ってくれないし…
凛さんやさくらちゃんはきちんとヘルプの事も考えてくれますよ?!」

「うん、そうだよね…。本当にごめんねぇ…」

小林は今日もキャストに平謝り。
ヘルプに着きたくないのなら、客を呼べ。そうも言いたくなるが、ヘルプがいないとお店が円滑に回らないのも事実で、ゆいは日に日に敵を増やしていく。
でも本人は、今日も何も思わない感じで呑気に笑ってる。


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