【完】さつきあめ
わたしはお客さんに本気で好きと言われたり、結婚してなんて冗談でも言ってくる人はいなかった。
ゆいが色恋をしているわけではなく、ゆいのお客さんが勝手に勘違いして色恋客になってしまうのだ。それが少し怖かった。

「さくら遊んでくれないなら、誰と遊ぼうかな?
原田さんとでも遊ぼうかなー」

更衣室には凛もいた。
凜もいながら、さらっとそんな事を言えてしまう子なのだ。

「あ、ごめんなさーい」

凜に気づいたゆいは全然申し訳なくなさそうにごめんなさいと言う。
それだけで更衣室の空気がぴりぴりとした。

「あんたねぇ…」

「凛さん怖い顔~…そんなんだから原田さんにも距離置かれるんじゃないですかー?」

あの日のお花見の喧嘩以来、THREEはなんだかぴりぴりしてて、こうやってゆいと凜による問題が度々発生していた。
今もまさに一触即発状態で、関わりたくないのとアフターが入ってる事、それを理由に美優と険悪な状態の更衣室を出る。

更衣室を出て、美優が唇を尖らせながら言った。

「ゆいって基本いいやつなんだけど…あたしにはついていけないところあるかな~…」

基本、温厚な美優でさえゆいには少し呆れ気味で、ゆいの席にヘルプで着くとすごく疲れる、とぼそりと呟いた。

「本人に悪気がないって怖い事だよね…」

そんな話を美優としながらお店を出て行こうとしたら、丁度フロアーで原田と小林が何やら話していた。
小林は何やら困った表情をしていて「ゆいちゃんが」と原田に言っている。

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